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空調解析を用いた評価/ご提案事例についてご紹介します。

写真:音楽室

現在、COVID-19(新型コロナウイルス)の拡大によって、換気に対しての意識が高まっております。みなさまも換気の重要性を認識されている一方で、暖房で温まった空気や冷房で冷やされた空気が、換気により室外に放出されることに、省エネなどの観点から抵抗を感じられている方もいらっしゃると思います。

今回は、空調機の導入による換気の促進、および夏場の冷却を両立させた有効性に関するご相談について、空調解析を用いた評価/ご提案事例をご紹介いたします。

概要

本件は、音楽室への空調機導入を検討している中、COVID-19の拡大によって、換気についても考慮する必要が出てきました。今回の事例は、換気の促進および適切な温度環境を実現できる空調機の設置位置について、空調解析を用いて検討したものとなります。

空調機設置位置検討内容

1. 設置位置(3ケース)

対象の音楽室には、吸排気口が以下のとおりに2か所設置されています。今回は、吸排気口に対して空調機設置位置を変更した3ケースの空調解析を実施し、結果を比較することで換気効率および冷却効果の評価を行いました。

図
ケースA(吸排気と別壁面)

図
ケースB(排気口側)

図
ケースC(吸気口側)

2. 解析モデル

空調解析では、各種条件(空調機の風量/能力、換気扇の排出流量、人体の発熱など)を設定して、建屋内の状態をコンピュータ上に再現します。ただし、実際の現場では、機器の劣化などによってスペック上の能力を発揮できていない、機器からの発熱量などの値が不明など、空調解析を行う上で条件の設定が難しい場合があります。
当社では、現場の状態を可能な範囲で測定し、測定結果を空調解析の条件に設定することや、空間内の温度や空気の流れを測定し、解析結果と測定結果の合わせ込みを行うことで、実際の現場を再現しております。

図:解析モデル

3. 評価

換気効率の評価

換気効率の評価では、ある拡散物質を空間に配置し、拡散物質の濃度で空間内の換気効率を評価します。
今回はCOVID-19を想定した換気評価のため、座った人の胸の高さでの濃度分布で評価します。以下のとおり、空調機の設置位置によって濃度分布は大きく異なっていることが視覚的に把握できます。

今回の評価では、全体的に拡散物質の濃度が薄いケースAが、換気評価において最も良い設置位置と判断しました。

図
ケースA(吸排気と別壁面)

図
ケースB(排気口側)

図
ケースC(吸気口側)

冷却効果の評価

冷却評価では、座った人の胸の高さでの温度分布で評価します。

今回の評価では、全体的に温度差は小さく、空調機設置位置による大きな違いはないため、冷却効果についての優劣はほとんどないと判断しました。

図
ケースA(吸排気と別壁面)

図
ケースB(排気口側)

図
ケースC(吸気口側)

空気の流れの確認

空間内の空気の流れを確認すると、ケースAが部屋全体の空気の流れを促進する効果があり、換気評価が良いことが分かりました。

図
ケースA(吸排気と別壁面)

図
ケースB(排気口側)

図
ケースC(吸気口側)

まとめ

今回は、最適な空調機の設置位置を判断するため、空調解析を用いて換気評価と冷却評価を行いました。換気評価では、ケースA(吸排気と別壁面)に設置した場合が、一番換気効果が高いことが分かりました。冷却評価では、全体的に温度差は小さいため、優劣はほとんどないことが分かりました。以上のことから換気と冷却を考えた場合、空調機の設置位置としては、ケースA(吸排気と別壁面)が最も良い設置位置と判断できます。

このように空調解析で効果を事前検討することで、「空調機の導入後に想定どおりの効果が出ず、追加で増設を検討することになった」といった心配もなく設備導入をすることが可能となります。