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工場の騒音を効果的に対策する方法について、当社の「防音エンジニアリング」を例にご紹介します。

図:工場

工場の騒音と言うと、皆さまはどのようなイメージを持っているでしょうか。 工場には一般的に、モータやポンプ、圧縮機などたくさんの設備があり、それらの音が合成されて騒音を作ります。 たくさんの設備が影響しているため、どの設備をどれだけ対策すれば良いか、その場の「感覚」で判断することが多いと思います。 これでは、対策したのに思うように音が下がらないといったことが往々にして起こります。 この記事では、そんな課題に対して、シミュレーションで騒音の影響を定量化して対策を行う方法をご紹介します。

従来型の騒音対策(試行錯誤型)

図:従来型の騒音対策(試行錯誤型)
*1 騒音を評価する場所(受音点)

まず、従来型の騒音対策のよくある例をご説明します。

工場の敷地境界線で騒音を下げたい場合を考えると、まず敷地境界に影響を与えていそうな設備(対策対象の設備)の洗い出しから始まると思います。この時、対策の対象となる設備は、現場の経験的判断で洗い出されるため、抜け漏れが発生する場合があります。

また、対策の程度(5dB*2対策するのか、10dB対策するのか)も感覚的にしかわかりません。そのため、過剰に対策をする(お金をかけすぎる)であったり、対策不足に陥ってしまう可能性があります。

*2 音の大きさの単位(デシベル)

解析主導型の騒音対策

図:弊社支援による騒音対策(解析主導型)

そこで行われるのがシミュレーションを使用した解析主導型の騒音対策です。シミュレーションと言うと、この条件では何dBになる?という予測計算を思い浮かべると思いますが、それだけではありません。

対策する上で重要なことは「その点における予測値に、どの設備が、どれだけ影響を与えているか」です。騒音シミュレーションでは、これを定量的に表すことができます。

この各設備の影響度(寄与度)を基に、対策する設備を選定し、最も効果のある騒音対策設計、対策工事を行うのが解析主導型の騒音対策です。

騒音予測シミュレーションのインプットデータ

図:騒音予測シミュレーションのインプットデータ
*3 対象とする発生源からの騒音がない場合の測定地点における騒音レベル。測定対象以外からの騒音。

騒音シミュレーションに必要なデータ(インプットデータ)は、「建物などの配置情報」「音源情報」「受音点(評価点)情報」の三つです。

建物などの配置情報は、工場建設時の図面から寸法を読み取ったり、現地で実測をしたりして取得します。音源情報としては、音の周波数情報(1/3オクターブバンド音圧レベル)と音源寸法が必要となります。既設の設備であれば、騒音測定を行ったり、設備の採寸を行うことで取得できます(音源情報としては、正確には「音響パワーレベル」が必要となりますが、こちらについては、別の機会に解説します)。受音点(評価点)情報は、例えば敷地境界線や、近隣の民家などの地理的情報から取得します。

これらをインプットして、コンピュータ上で騒音状況を再現する騒音予測モデルを作成します。

騒音予測シミュレーションのアウトプットデータ

図:騒音予測シミュレーションのアウトプットデータ

次に、騒音シミュレーションで得られるデータ(アウトプットデータ)を見ていきましょう。アウトプットデータは、受音点(評価点)ごとに得られます。ここでは、右上図の赤点で示した受音点に注目してご説明します。

このモデルは、工場を模擬しており、受音点の周囲には設備A(建屋②屋上モータ)、設備B(建屋①換気ファン)、設備C(非常用発電機②)、設備D(非常用発電機①)があります。

左上の棒グラフは、受音点における各音源の影響度(寄与度)を高い順に並べたもので、折れ線グラフは棒グラフを累積したものです。グラフ全体でパレート図と呼ばれることもあります。この図を見ると、最も影響が高いのは設備Cで、次いでD、Bと続きます。注目いただきたいのは順位が4位以降の折れ線グラフです。4位以降は、影響度がほぼ変わっておらず、この地点の騒音は、ほぼ上位三つ(設備C、D、B)で決まっていることが分かります。

それを具体的に数値で示したのが、その下の表です。これを見ると、受音点での予測値が61.7dBとなり、そのうち57.5dBが設備C、55.9dBが設備D、55.0dBが設備Bと分かります。この、騒音の内訳を示す作業は、いわば工場内の各受音点に対して、設備ごとの「騒音の通信簿」を付けるようなものです。騒音影響の程度が明確になるので、影響度(寄与度)が高い順に対策を行っていくことが効果的な対策となります。

表:騒音予測シミュレーションのアウトプットデータ

まとめ

今回の記事では、まず騒音対策について、従来型(試行錯誤型)と解析主導型の対策フローの違いをご説明しました。従来型の対策では、現場の経験的判断に基づいて対策対象設備を選定しますが、解析主導型の対策は、シミュレーションの結果に基づいて、対策対象の設備と、対策の程度を決定するというものでした。

次に、解析主導型の対策でカギとなる騒音予測シミュレーションにおけるインプットデータとアウトプットデータについてご説明しました。インプットデータは、建屋の配置情報、音源情報、受音点情報が必要となり、アウトプットデータとしては、騒音の予測値と設備ごとの影響の内訳が得られることをご説明しました。

アウトプットデータで得られる設備ごとの影響の内訳は、いわば工場内の各受音点に対して、設備ごとの「騒音の通信簿」を付けるようなもの。この通信簿を基に対策の方針を決定していくことをご説明しました。

日立パワーソリューションズでは、このような解析主導型の騒音対策である「防音エンジニアリング」をご提供しております。工場の騒音でお悩みの方は、是非一度お問い合わせをお願いいたします。