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Hitachi

DX時代の設備保守を支える「KamomeX」を開発新たなデジタルサービスを創生するために、デジタル保守プラットフォーム「KamomeX」を開発。
企業のESG(環境・社会・ガバナンス)に貢献する切り札として期待がかかる。

計画外停止が許されない社会・産業インフラのために

発電所や上下水道などのライフライン、生産工場で使用されるポンプやコンプレッサなど、社会活動や暮らしに大きな影響を持つ施設や設備は、計画外停止をしない運用が求められています。一方で、熟練技術者の経験とノウハウが不可欠な設備の運用・保守業務の現場では、技術者の高齢化と人手不足が技能の維持・継承の大きな課題となっています。これらのニーズや課題に応えるため、これまで当社は、機器の劣化や損傷を早期に検知するソリューションを提供してきました。
こうした背景のもと、分析担当者の知見やプロセスのノウハウを機械学習モデルによって蓄積するとともに、標準化が難しかった制御・運用技術のナレッジをデジタル化し、管理するデジタル保守プラットフォーム「KamomeX(カモメックス)」の開発に至りました。設備の状態変化に合わせてデータ分析精度の維持・向上を図るこのKamomeXと、当社が長年かけて培ってきた豊富な保守サービス技術・ノウハウを組み合わせることで、保全管理や投資計画の意思決定の最適化を支援します。
今、お客さまを取り巻く事業環境が大きく変化しており、DX*1化が強く求められています。無駄な作業を省力化したい、現場に行かないで設備を確認したい、といった声に、従来の保守サービスとKamomeXを連携させ、高度化することで応えていきたいと考えています。

アジャイル開発*2により適切な価値提供を追求

開発プロジェクトの立ち上がりは日立グループがお客さまとの協創を掲げた2018年ごろ、実際にシステム構築に着手したのは2020年です。開発チームと顧客ビジネス創出チームが一緒にサービスを構築した、当社初の取り組みとなりました。
まず、お客さまが抱える課題をしっかりと聞き出し、社内で議論を重ねて開発がスタート。社内の保守サービス部門で実際に使えるレベルまでソリューションを磨き上げたうえで、お客さまに価値を提供することが、開発における大きな指針です。中でも注力したのは、保守サービス部門からのフィードバックへの対応です。
実際にKamomeXを使ってもらい、「このデータを表示したい」「この操作を省くと使いやすい」といった声を反映して、再度使ってもらうという開発工程を繰り返しました。彼らの声に一つひとつ対応することで、使いやすさの点でも高品質なものを実現できたと自負しています。
こうしたアジャイル開発によってサービスを開始するまでの期間短縮に加え、導入コストも抑えられました。現在は、当社のガスエンジン発電装置と風力発電設備を使って社内実証を行っている段階ですが、KamomeXが、多様な社会・産業インフラを担うお客さまに提供できる価値は、大きく4つあると考えています。

  1. 高精度なデータ分析環境で設備運用のリスクを定量化する
  2. 設備の監視で計画外停止のリスクを低減し、事業の健全性向上を図る
  3. 保守業務を効率化・高度化して保守コストを最小化する
  4. カスタマイズの最少化で導入しやすくする

です。

社内DXを推進し、適切かつ迅速に価値を届ける


経営戦略本部 経営戦略部
全社プロジェクト推進グループ
(左)野田 統治郎
(右)野上 翔

お客さまへの導入はこれからですが、印刷業や食品メーカーをはじめ、多くの事業者さまからご相談をいただいています。全社の一元的なデータ管理、保守データの管理、設備の健全性の確保が課題だというご相談にも当社のデジタルサービスは応えていきます。
そして今、さらに高度化したサービスの提供をめざして、社内DXも推進中です。KamomeXによる設備故障などの予兆分析機能が、保守にまつわるさまざまな機能、例えば設備管理や作業指示などの現場支援機能とつながれば、お客さまに提供できる価値をもっと向上させることができるでしょう。
また、ほかのデータベースへの安全なアクセスを実現させれば、設備の異常を検知した際に、過去の保守履歴や部品交換履歴、お客さまとの取り引き状況ともリンクさせて、データを活用したより深い分析ができるようになります。
将来的には、CO2排出量といったお客さまの環境経営に関するデータともリンクさせることで、新たな課題の抽出や解決策も提供したいと考えています。
お客さまに適切な価値を届けることは、お客さまの潜在的な課題をきちんと掘り起こすことから始まります。目に見える課題の奥にある本質的な課題を捉え、より良い運用・保守業務をお客さまと一緒につくっていく。私たちの協創への取り組みに、終わりはありません。

*1
デジタルトランスフォーメーション。データやデジタル技術によって、製品・サービスをはじめ、ビジネスモデルや組織の企業文化などを変革し、企業の競争優位性を向上させること。
*2
小さなサイクルで、計画から設計・開発・テストまでの工程を繰り返し、機能の追加を継続する開発手法。従来の開発手法と比較し、素早く開発を進めることが可能。