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Hitachi

人を育てることは、企業を成長させること

1960年に設立し、主に発電所や変電所、交通施設など、社会インフラ分野の保守・メンテナンスのサービス事業に取り組んできた当社では、「人こそが企業の財産である」との信念から、さまざまな角度から人財育成プログラムの充実に力を注いできました。
日立グループが、OT*1、IT*2、プロダクトを組み合わせた社会イノベーション事業を推進するなか、OTを強みとする当社が果たす役割はますます重要になってきています。今後は、OTを効率的かつ効果的にお客さまに提供するために、いかにデジタルを活用するかということにも注力しておりますが、今回は、当社の強みであるOTに関する人財育成への取り組み事例をご紹介します。

*1
OT: Operational Technology
*2
IT: Information Technology

人財育成の歴史

かつてはモノづくりのベテラン技術者たちが、株式会社日立製作所(以下、日立)の工場から異動してきて保守・メンテナンスを実施していました。これがプロダクトを知り尽くしたOTの原点です。事業拡大に伴い、保守・メンテナンスを専門とする人財の育成にも力を入れるため、1979年、トレーニングスクールを設立。最新の制御用計算機およびコントローラーなどの設備をそろえ、さらには機種ごとのスペシャリストを講師に迎えて、OTを身に付けるための教育を開始しました。
その後、現地を想定した訓練を実現するためトレーニング設備の拡充を図り、実際の作業および確認試験ができるような変電所設備も整えました。試運転・保守点検の教育も実施できるよう、電力・公共関連電気設備を増強し、新入社員、中堅技術者、ベテラン技術者の研修に活用。教育環境の拡充に努めました。
技能職の育成に関しては、2009年、日立が運営する日立工業専修学校からの人財採用をきっかけに、メニューを充実していきました。今では日立グループ製缶・溶接技能競技大会、技能五輪全国大会、全国アビリンピック大会への挑戦を通した人財育成にも、積極的に取り組んでいます。

競技会への出場と人財育成の関係

各競技会への出場という挑戦を通して、主に二つの人財を大きく成長させると考えています。一つは選手として出場する社員、もう一つは、選手を指導する側の社員です。前者は技術力を、後者は指導力を、そして両者ともにコミュニケーション力、人間性、考える力などを身に付けます。
2018年、沖縄で開催された「第56回技能五輪全国大会」の電気溶接職種に出場し、当社として初めて銀賞を受賞した川﨑清勝さんは、自身の成長に関して次のように語っています。「今回で3度目の出場。年齢的にも今回が最後なので、何が何でも結果を出したいと思い、訓練に臨みましたが、自分で決めた目標が達成できず、自分に腹が立つことも多かったです。堀田指導員といろいろ話しているうちに、考えすぎず取り組む方がうまくいくことが分かり、それを実行することで乗り越えました。技術面でも精神面でも、これだけ厳しい世界はないと思うので、3年間の大会出場を通して成長できたと思っています」
また、日立グループ製缶・溶接技能競技大会に出場した齊藤達也さんは「昼間は実技の訓練で集中力や体力を限界まで使いながら、夜や休日には初めて聞くような専門用語を覚える学科の勉強をしました。とても大変でしたが、効率よく仕事をする力が付き、以前ならば半日かかった作業が1〜2時間でできるようになりました。技術面だけでなく、作業スピードの面でも職場に貢献できると思います」と、訓練や大会への出場で身に付けたスキルや経験が仕事に生きると語ってくれました。

一方、川﨑さんをはじめ、3人の選手の指導員を務めた堀田直樹さんは「選手同士、選手と指導員がコミュニケーションを取ることを第一に心がけました。また選手には、基本的に自分で物事を考えさせ、答えが出ないときにだけアドバイスを行いました。溶接はメンタルが結果に出る職種ですので、長い訓練期間中、モチベーションが下がっていそうなときには無理をさせないなど、精神面でのサポートにも気を遣いました」と語ってくれました。齊藤さん、石川さんの指導員、沼田恭拡さんも「製缶・溶接では技術をそれぞれの感覚で身に付ける必要があります。一方的に教えるだけでは伝わりませんので、本人が理解できるまで言葉や実践で教えることを意識しました」と、指導方針について語ってくれました。技術、心身を鍛えながら、もう一つ、通常の業務だけでは得られない貴重な学びがあります。それは、一人ひとりの成長への挑戦を、職場はもちろん、家族も後押ししてくれているという実感が得られるということです。大会に向けて公開練習や模擬大会などを定期的に開催しますが、多くの方がこれに参加します。実際に訓練する選手は少人数ですが、その後ろには多くのサポーターの存在があります。全国アビリンピック大会で銀賞を獲得した佐藤翔悟さんは「僅差で金賞を逃したことが残念でしたが、職場に戻ったとき、皆さんが拍手で迎えてくださったことが、とてもうれしかったです」と、大会への出場を通して、自身が職場の活性化に重要な役割を果たしていることを実感していました。
今回、選手、指導員、そして職場が三位一体となり、“人財の育成”に力を注いだ結果、技能五輪全国大会と全国アビリンピック大会の両方で、銀賞という輝かしい成果を獲得できたのだと思います。

これからへの期待

競技会への挑戦で大切なことは、心技体をバランスよく鍛えることです。自分の強みと弱みを把握し、その対応を考え、平常心で実力を発揮する「心」の力、繰り返しの訓練でスキルを上げていく「技」の力、技術の向上に必要な筋肉を鍛え、健康な状態を保つ「体」の力。それぞれ最高レベルに上げるための試行錯誤を繰り返すことで、技術的にも人間的にも大きく成長します。この大切な人財育成の場を、これからも多くの従業員に経験してほしい。そして、職場で貴重な戦力となってほしい。そう期待して、これからも競技会への挑戦を支援していきます。

人事総務本部 総務部 部長 根本 文則

SDGs*の17の目標の中に「教育」があります。そこには「すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する」と記載されています。つまり、どのような人にも、一生学び続ける機会が与えられなければならないということです。
私たち人財開発部のミッションの一つは、自社が成長し続けるために必要な人財を育成することです。「人は財(たから)である」という思いから、社内では「人材」ではなく「人財」としています。一人でも多くの人が、一つでも多くの可能性を追求できるよう、技術、語学、ビジネススキルなど、さまざまなトレーニングを用意しています。職種や年齢は関係ありません。自ら手を挙げて学習したいという皆さんの意欲と、自己成長の実現を全力でサポートしていきます。

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SDGs: 持続可能な開発目標

人事総務本部 人財開発部 担当部長 鈴木 守