ひおき地域エネルギー株式会社 様
こうして稼働した日置市の二つのコンパクトグリッドは、従来よりも低廉な料金での安定的な電力供給を実現。事業収益増に伴う自治体の税収増や関連施設の賃貸料収入などを通して地域内に経済循環を生み出したうえ、電力供給事業に関わる、それまでなかった仕事が生まれたことで新たな雇用機会も創出しました。
「事業開始後、何よりも実感したのが、“仕入れ原価ゼロ”のすごさです。私が長年経営しているガス会社のような小売り業者の場合、仕入れ価格の変動で収益も大きく左右されてしまいます。減価償却する設備関連の初期投資や保守コストなどが発生するとはいえ、ほかの事業者を介さずに、太陽光を使って自分たちでつくった電気を自分たちで使える。そして仕入れ原価もないので、需要家の皆さまに低料金で提供できる。『エネルギーの地産地消』とは、こういうことだったのかと驚きながら、改めてそのすばらしさを感じています」と小平氏は言います。
こうした経済効果と並ぶコンパクトグリッドの優位性について説明するのは、同社電力販売事業部の奥保成氏です。
「現在、環境省へ提出する数字を取りまとめているのですが、CO2排出係数などに関して、明らかにこれまでにはなかった低いレベルの数値が出ています。実は、すでにいくつかの自治体や再生可能エネルギー関連団体などから視察したいという要望が寄せられていて、環境負荷を低減できるコンパクトグリッドへの期待の大きさを肌で感じているところです」
このように、再生可能エネルギーを利用しつつ、遠隔地からの送電に費やされるエネルギーも削減できるコンパクトグリッドは、地域経済だけでなく、地球環境にも確かな恩恵をもたらしています。
今後の課題として検討が進められているのが、「蓄電池」の導入です。再生可能エネルギーを利用する発電では、日照時間や風速などによって発電量が変動します。その時々の発電量に左右されることなく、災害時なども含めて常に安定的に電力を供給するためには、発電した電力を貯蔵しておくための蓄電池が必要です。
「蓄電池があれば、当社の最重要ミッションである電力の安定供給と同時に、再生可能エネルギーを用いた発電量の比率を現在の20%程度から50%程度まで上げられるという試算もあります」と奥氏が言うと、「その比率を高めるほど電力料金を低減でき、事業基盤もさらに強くできるでしょう」と小平氏。
続けて「再生可能エネルギー比率を限界まで高められた形こそ、このプロジェクトの完成形だ」と事業の将来を見据えます。さらに、「お客さまに1円でも安くエネルギーを提供しようという努力が、エネルギー企業のあるべき姿勢だと私は考えてきました。今、この事業を通して地域に貢献しながら、その思いを追求できることこそ、エネルギーの地産地消の本質だと感じています」と本プロジェクトを総括しました。
稼働開始以降、この町にさまざまな恩恵をもたらしている日置市のコンパクトグリッド。
今後も日立パワーソリューションズは、動き出したばかりの地域新電力の進化と発展を、固いパートナーシップで支えていきます。
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